ハウスダストのアレルギー性鼻炎と診断されて、点鼻薬を使用しています。
使用回数が増え、すぐ鼻が詰まって来ます。手術などで直す方法はないのでしょうか?
夜も、鼻が詰まり、2〜3時間おきに目が覚めます。点鼻薬の副作用なのでしょうか?
回答: 耳鼻咽喉科 教授
その点鼻薬をどこで出され、どういう種類かがわかりません。まずそれからです。
【点鼻薬種類】
ここではまず点鼻薬のことについて書きましょう。おおまかに分けこれには3種類(抗コリン型と抗アレルギー型を分けると4種類)あります
(1) 単に鼻の粘膜を収縮させるもの(血管収縮性点鼻薬)粘膜収縮性ともいいます。
これは風邪でも何でも鼻がつまったときアレルギーがあろうとなかろうと一時的に鼻の粘膜を収縮させ鼻詰まりを治すものです。しかし一時的で、数時間後にはまた詰まり使い過ぎると作用しにくくなり副作用でかえって鼻詰まりがひどくなる、また使うという依存性もあるものです。短期,医師の処方下でというのを守ってほしいものですが市販薬に多く、どうしても長期乱用が多くなります。
種類は
塩酸トラマジリン・・・トーク
硝酸ナファゾリン・・・プリビナ
硝酸テトリゾリン・・ナーベル
塩酸オキシメタゾン・・ナシビン
血管収縮剤という系統です。市販でよく売られている点鼻薬にも入っています。(パブロン、ルルとか点鼻薬の内容にはいってないか確かめてください)
副作用で長期に使うとひどい依存性を生じます。あくまで『短期投与』です。長期に漠然と使うと(特に市販の点鼻薬を)鼻づまりが使ってないときに副作用で起こります。これを薬剤性の肥厚性鼻炎といい、これは治療がなかなか難しいですね。塩酸ナファゾリンなどをだれでも長期にわたって使うとそれだけで、鼻の粘膜の肥厚がおこり、普通のアレルギー性鼻炎の治療では効力はないと思っています。
また鼻詰まりのために点鼻薬の血管収縮性点鼻薬の、ある系統、硝酸ナファゾリンを使うと(プリビナ)副作用に嗅覚消失があります。まず、なんとかこれから離脱しないといけません。離脱するために、耳鼻科でも『点鼻薬中毒性肥厚性鼻炎を治す』方法があります。依存性が生じ、それによってまた連用がおこり鼻粘膜が異常増殖してかえって鼻詰まり(点鼻薬性肥厚性鼻炎)の原因になります。短期に限ることということと、それと妊娠中は慎重投与です。
(2)ステロイドが入ってない、また血管収縮性薬剤のはいっていない抗アレルギー点鼻薬。
これは安全性は高いが即効性は3に比べ落ちる、しかし長期使用可能で予防的に使える。子供の使用もできるものもある。たっても一日何回使用してもいいが、2に比べ即効性はないですが、アレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎に有効です。
(2)a 化学伝達物質遊離抑制作用のあるもの
クロモグリク酸ナトリウム・・・インタール ノスラン
アンレキサノクス・・・ソルファ
(2)b 抗コリン薬臭化フルトロピウム・・・フルブロン
3に比べ,どっちかというと作用は若干遅いようです。
ただこれも妊娠中に慎重投与の場合もあります。これはほとんどが耳鼻科外来処方ですが妊娠してる可能性がある場合は医師と相談ください。またこれは事前にアレルギー性鼻炎があるか、あるいは血管運動性鼻炎があるかも確認して治療のひとつとして行われるものとご理解ください。
(3) ステロイドの入った抗アレルギー用の点鼻薬。これは2に比べ即効性はあるが,やはり長期にわたるとステロイドの副作用が全然ないと言えません。一時的な使用,特にアレルギー,花粉症の最盛期時期に出来たら限定して数週間から数カ月に期間限定で使うものですが、しかしステロイドということで普通は極度に恐れることは全然ないです。花粉症最盛期に医師の指導下で使って戴きたいのです。
フロピオン酸ペクロメタゾン・・ベコナーゼ,アルデシン,リノコート,サルコート
フルニソニド・・・シナクリン
プロピオン塩酸フルチガゾン・・・ フルナーゼ
つまりエアゾル型か(アルデシン、ベコナーゼ)噴霧型か(リノコート)だけで主要成分は同じなのです。これらのステロイド入り点鼻薬も組織内で急速に分解して全身作用は少ないと言われています。妊娠中は禁忌ではないのですが,やはり『慎重投与』です。
全身的な副作用はほとんどないといえ、局所的に鼻の傷が治りにくいので、特に手術後(下鼻甲介切除)鼻中隔手術後は控えることと、後傷が治りにくいので鼻血が出やすいこともあり、つかう時には医師の指導と鼻血が出やすいことがあれば、先生にお聞きください。
手術は
【アレルギー性鼻炎の手術治療】
アレルギー性鼻炎手術としてはレーザー治療だけでもないのです。外来でも出来るアレルギー性鼻炎の治療手術について書いておきます。原則として鼻の中にある下鼻甲介という部分の粘膜が反応して鼻炎を起こしますので、この表面の細胞を焼灼もしくは破壊する。あるいはこれを切除することが原則で『アレルギー性鼻炎を起こす細胞を焼灼もしくは破壊』することです。いすれも『健康保険が効く』ものです。
1)レーザー手術これには炭酸ガスレーザー、Nd:YAGレーザー、KTP/532レーザーがありそれぞれちょっとずつ特性が違うので、これは後に書いておきます。これはいずれも『レーザー治療』として種類はどうであれ、同じ保険点数。(つまり健康保険も効きます。
利点は
操作性がいい
入院不要(レーザー手術だけの単独ならです)
出血や疼痛が少ない
再発時反復手術可能
欠点は
装置がやや高価(な場合も多い)だから特にNd:YAGレーザー、KTP/532レーザーはかなり大きな病院にしかおいてない場合もあります。
煙と臭いの発生(これはそれほどひどくはないにしろ)
眼の保護が必要(これはきちんと手術の時に対処します)
か皮形成が遷延することもある。(術後に粘膜につくものです)
2)凍結手術
利点は
入院不要
出血は比較的少ない
再発時反復手術可能
欠点は
装置がやや高価(なので、おいていない所が多いです)
鼻甲介(ここがアレルギー反応を起こして鼻詰まりなどの原因になる)でも特に後端の操作が困難
手術後高度な鼻粘膜腫脹(はれが一時的にひどくなります)
3)電気凝固術
レーザーでなく周波の高い電力を出す電極を利用して粘膜下に挿入凝固するものです。
この電気凝固は下鼻甲介手術だけでなく装置(端子)を変えたらハナタケなどの切除にも使います。一般耳鼻科ではレーザー装置より安価なのでこれを使う所も多いようです。
利点は
入院不要
出血が比較的少ない
手術時間が短い
再発時反復手術可能
また1や2に比べ装置が安価なので今の段階ではこれを装置してる病院が比較的多い。
欠点は
煙と臭いの発生
熱感を伴う
下鼻甲介(ここがアレルギー反応を起こして鼻詰まりなどの原因になる)でも特に後端の操作が困難 痂皮形成が遷延することもある。
4)化学焼灼術
トリクロロ酢酸を用いて外来で下鼻甲介中心に塗布します。表面のアレルギー性鼻炎を起こす細胞を焼灼することです。
長所は
操作が簡便(塗るだけですから)
コストが安い(私の病院でも出来るくらいです、薬剤を入手できますので)
入院不要
再発時反復手術可能
欠点は
塗布濃度が不均一になりやすい。
鼻中隔との癒着が起こる場合もある(めったにないのですが。私は経験してないです)
やや疼痛を伴います。(これは一時的ですが気をつけています)
5)下甲介粘膜切除術
長所は
切除範囲が自由に求められる
また肥厚して1から4のやり方ですでに行ったとしても鼻詰まりが治りにくい人には一番適した方法です。
またアレルギー性鼻炎だけでなく下鼻甲介の厚いために鼻詰まりが起こっている人には一番効果があります。また一緒に鼻中隔湾曲手術を行うこともあります。手術時間が短い(といってもなるべく手術室で行います)
欠点は
入院が必要(切除したところにガーゼをつめて止血するので)
出血が多い
粘膜を切除した後ガーゼパッキングをする(また数日後それを除去するときに出血や疼痛があります)
このどれかをするか、あるいはレーザー治療か、保存的治療にするか副鼻腔炎の治療をどうするかなどは先生も判断されるか、あるいは患者さんとのお話によります。医療サイトからこれだけアレルギー性鼻炎の治療といってもいくつも手術適応があることを書いておきます。
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