チョコレートの主原料となるカカオ豆に、虫歯を予防する成分が含まれているようだ。
大阪大学大学院歯学研究科の大島隆・助教授(小児歯科学)は「その成分は、
特にカカオ豆の殻(カカオハスク)に多く含まれている」と言う。
●虫歯の原因菌を抑制
チョコレートには歯の大敵というイメージがあるが、大島助教授は「チョコレートは、砂糖を大量に含むにもかかわらず、虫歯を発生させる力は弱いと以前からいわれていたのです」と話す。
チョコレートについては、第2次世界大戦直後に、スウェーデンで行われた実験で、既に、間食にチョコレートを食べると虫歯が発生するが、トフィーやキャラメルほどは虫歯が多くならないことが指摘されていた。こうしたことから、カカオ豆には、虫歯の原因菌であるミュータンス連鎖球菌を抑制する物質が存在すると、1部では考えられてきた。
チョコレートは、カカオ豆をばいせんして殻などを取り去った上で、カカオマスといわれる粉末にし、砂糖、ミルク、香料などを加え、押し固めて作る。取り去る殻はカカオハスクという。
●歯磨きに混ぜて
大島助教授は、虫歯の菌を接種したラット90匹を6グループに分けて、カカオマスとカカオハスクをそれぞれ異なった割合で混ぜた飼料や飲料水を与え、虫歯の進行状態を面積と深さで調べた。
その結果、カカオハスク入りの飼料を与えられたグループのマウスは、カカオマス入りや何も混ざっていない飼料だったグループよりも、虫歯の進行が抑えられた。
特に、カカオハスクを飲料水中に混ぜた場合、100ミリリットル中0.2グラムの濃度のグループでは、カカオハスクを混ぜないグループに比べ、虫歯の進行が約半分だった。
「虫歯を抑える効果は、カカオマスにも見られましたが、カカオハスクの方がはるかに強く認められました。カカオハスクには、ポリフェノールと脂肪酸が含まれていて、この両方が虫歯を抑える働きをしていると考えられます。このため、カカオハスクは、チョコレートの中に入れた方がいいと考えられます。カカオハスクを使ったうがいの実験でも、歯こうを抑える効果が得られているので、口腔(こうくう)洗浄液や歯磨きに混ぜれば効果が期待できます」と、大島助教授は話している。
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