糖尿病は、糖尿病を発症しやすい素因を持つ人が不適切な生活習慣を続けると発病する。
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の門脇孝助教授は「治療には、
食事療法とともに運動療法が不可欠です」と強調する。
● 肥満から糖尿病へ
日本人の摂取エネルギー量は、戦後50年余りの間、あまり変わらないが、この間に、脂肪で摂取する割合はほぼ4倍に増えている。脂肪の多い食事は、肥満に結び付く。
都会でも農村でも、車の普及で、運動不足の人が多くなり、最近の日本人は、若い女性を除き、小太り傾向になった。運動量と肥満の関係については、1日1万2000歩歩く人が肥満になる危険度を1とすると、4000−8000歩の人は、危険度が2倍以上になるといわれている。
肥満の程度を表すものの1つに、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割るBMI(ボディー・マス・インデックス)という指数がある。BMIが21、22だと最も長生きし、24.2以上では、糖尿病になる危険度が21、22の人の4倍以上になる。
膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンのインシュリンは、ぶどう糖を筋肉に取り込む働きをしているが、肥満によって肥大した細胞からは、この働きを邪魔する物質が出てくる。そのため、肥満になると、筋肉にエネルギーが不足する半面で、血液中にぶどう糖があふれることになり、糖尿病が発症する。
● 運動には大きな効果
糖尿病には、運動が効果がある。運動すると、まず、血液中のぶどう糖が筋肉に取り込まれることになり、さらに、脂肪を燃やすことで肥大した細胞が正常な大きさになって、インシュリンの働きを邪魔する物質が出るのを抑えることになる。このため、インシュリンの働きが回復する。
この運動の強さは、1分間の脈拍数が、40−50歳代で120程度、60、70歳代で110程度に上がる中等度が適当だ。運動量は、体重によるが、80キロカロリーを消費する運動量を1単位とした「運動交換表」によって目安を付けるとよい。1日に3単位以上を、週に3日以上行う。
しかし、血糖値が非常に高い、血糖の管理ができない、眼底出血や腎(じん)症が進んでいる、心臓病がある−といった人は、運動が病気を悪くする危険性がある。
門脇助教授は「運動は、きついと思わない程度から始め、徐々に強めていくこと。インシュリン注射をしている人や、心臓や肺、ひざ、腰などに病気を抱えている人は、医師とよく相談して行ってほしい」と注意を促している。
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