「白内障」。この言葉は知人や家人、マスコミを通じて一度は聞いたことがあると思います。
俗にいう「しろそこひ」で、最も進んだ時には黒目が白く見えるためつけられました。
ひと昔前までは多くの人にとって、手術をしても非常に度の強い眼鏡をかけたり、
また、片眼にコンタクトレンズを装用する必要があったりして、不便を感じることが多い状態でした。しかし、ここ十年の手術の進歩は目をみはるものがあり、眼内レンズという一種の人口臓器移植が安全に広く行われるようになり、このような不便は取り除かれました。
これは、白内障に関する正しい知識と適切な治療をお知らせする小冊子です。
白内障手術
●手術の時期と年齢
昔は、見えなくなってから行っていましたが、近年、手術法が高度に完成された結果、いつでも安全に手術ができるようになりました。今では、白内障のため、今までの生活状況をかえなければならないと思った時が手術の時期と考えてください。運転免許の必要な人は、0.5くらいからでも手術の時期になります。年齢は手術に耐えられる身体なら100才でも可能です。
●手術について
白内障手術・眼内レンズ挿入術は、顕微鏡の下で、大きく拡大しておこなわれます。普通は局所麻酔で、手術時間は30〜40分くらいです。若くて元気な人は、外来手術も可能で入院する必要はありません。ただ、白内障の手術を受ける人は、他にも病気のある年配の方が多いので入院した方が無難でしょう。
●白内障手術と他の眼疾患
他の病気はあっても手術は可能です。しかし、時期を選ぶ必要があります。手術の経過は良好でも、視神経や網膜の状況に応じた視力しか回復しません。眼内レンズ手術は万能ではありません。
●白内障の手術方法
濁った水晶体を薄いカプセル1枚を残してとり除きます。このカプセルは眼内レンズを挿入し、固定するために残しておきます。また、目の内部の構造を生理的な状態に保つためにも重要で、術中・術後の合併症の確率も低くなります。カプセルや水晶体を支持する組織(チン小帯)が弱いと、術中に眼内レンズが入らないこともあります。5年以内に残ったカプセルが濁ってきて、10〜20%の患者は、視力が低下することがあります。しかし、この濁りは特殊なレーザーで短時間に安全で痛みもなく、外来手術でとり除くことができ、視力も回復します。
●眼内レンズ
老人性白内障の手術で眼内レンズを挿入する人は80〜90%になっており、ごく一般的で、白内障手術の標準となっています。
眼内レンズの歴史はすでに30年以上になり、今、使用されている眼内レンズの材質(アクリル樹脂)はきわめて安定しています。少々の打撲では動いたり、破損したりしません。また、眼内レンズを入れても弱い度の眼鏡が必要なこともあります。
3ヶ月くらいで屈折状態が安定してきますので、この時に眼鏡を調整してください。
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